朴守賢《氷解》:静謐な音の中に灯る希望
左手のピアノ国際コンクール入選作品集より、朴守賢作曲《氷解》がワンハンドピアノスコアより世に送り出された。その音に耳を傾ける時間は、深い内省へと誘う。
本作は、作曲者自身の経験から紡ぎ出されたという。朴氏が語るように、パートナーの新型コロナウイルス感染という困難に直面し、育児、看病、家事を一身に担い疲弊しきった日々の中で、病床のパートナーのために参鶏湯を作ろうと、凍った鶏肉を鍋に入れ火にかけた。その折、氷がゆっくりと溶けゆく様を静かに見つめるうち、日々の喧騒を忘れさせる、心に染み入る体験を得たのだと。
氷が解け、肉を縛る紐を解くと、中から現れる餅米やなつめ、朝鮮人参。それらが鍋の中で踊るように浮かび上がる情景は、次第に作曲者自身の内面と重なり合ったという。コロナ禍という社会から隔絶され、心にぽっかりと開いた冷たい穴に、「人は人と生きている」という実感が温かい滲みとなって広がっていく。
この内省的な時間を経て生まれた《氷解》は、左手ピアノという表現に徹している。ペダルを用いず、限られた音域の中で線や響き、リズムを重ねることで、静けさの中に変容する熱を描き出す。それは、孤独の中にありながらも、人と人との繋がりがふと心に滲む瞬間――そのかすかな光と温度を、音の中にそっと閉じ込めた作品である。
この作品が、聴く人の心に穏やかな光を灯すことを願う。音楽が持つ静かなる力を、ぜひ体験してほしい。
左手のピアノ国際コンクール実行委員長:
左手のピアニスト・智内威雄
PARK Soo-Hyun : Ice Thaw for left-hand piano
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